会長 寺島 吉彦(国際基督教大学)
教育機関もこんなに世の中の情勢に影響を受けるのか、と驚いています。
新型コロナウイルスの影響はもちろん大きく、若者たちはまだそう長くもない人生のうちの 3年強を今までにないような非常に制限の多い中で過ごしました。高等教育機関においてはこの影響を受けた若者たちをしばらく受け入れ続けることになります。また、コロナ禍においては急速にデジタル化・オンライン化が進みました。この時期にオンライン対応を余儀なくされた学生相談機関は少なくないですし、これは学生のオンライングループワークだったりオンライン就活、そして教職員のオンライン会議の定着につながりました。これは人と人との関わり方にも大きな影響を及ぼしたように思います。
国際情勢が変わり影響力の大きい国が留学生の受け入れに消極的になったりすると、海外留学を計画していた国内の学生は予定の変更を余儀なくされます。留学のために地道な準備を続けてきた学生にとっては非常に大きな痛手です。またなんとか留学にこぎつけた学生も、なんとなく逆風を感じ受け入れ先の国で不安で落ち着かない学生生活を強いられることになったりします。通貨の価値に大きな変動などがあるとお金の算段が付かず、留学が成り立たなくなるようなケースも生じます。インバウンド学生の動向にも影響があります。円が強かったりすると日本で一旗揚げようというエネルギッシュなタイプの学生さんが増えるような気がしますし、逆の場合は別に日本に思い入れはないけれど安かったから来た、というような学生さんが増えることに
なります。
日本は海外の動きを後追いすることがどうしても多いですが、DEI(Diversity, Equity,Incluson)に関する動きにも影響が出てきそうです。もしかしたら今までの動きに幾分無理があったのかもしれませんが、揺り戻しの動きは強くみられますし、またそれに対する抵抗の動きも出てくることになるでしょう。日本社会、そして高等教育機関はどのような道を進むことになるのでしょうか。
今までもそうでしたが、今後高等教育機関は国内・国外を問わず災害・疫病・戦争・経済状況の変化・価値観の激変など不安定な情勢の中、生き残りを賭けながらその使命を果たしていくことになります。18 歳人口がますます減少する中、文部科学省の中央教育審議会では高等教育機関の「撤退を支援する」的なことを明文化しており、大学を取り巻く環境はより厳しくなっていくわけですが、学内のこじんまりとした一部署であることが多い学生支援機関で出来ることは限られます。学内のことならいざ知らず、国内および国際的な変動に対応していくとなるとなおさらです。
そのような中、「困難な時に会員同士で支えあえる場をささやかでも維持していきたい」というのが会長としての私の思いです。いろいろと大変な状況はありますが、日頃の苦労をねぎらいあい、工夫を共有しながら、変化していく高等教育機関の中で我々カウンセラーがどのような役割を果たしていくべきかを皆さんと一緒に考えていきたいと思います。会員同士で支えあう場を維持するという考えのもと、今年度も幹事会のメンバーでやれることを工夫していきます。会員の皆様にはご負担にならない範囲で、各々少しづつ運営に関わっていただければと思います。お声がけした際はぜひ前向きにご協力いただけますようお願いいたします。
2025年4月11日